エクセルのエントリー用紙を配るのを、やめました――大会の受付をAIと作り直した話

トランポリンコーチの伊藤です。

2026年9月1日から、私が競技部長を務める茨城県体操協会トランポリン委員会の大会――第13回茨城県チャレンジカップ(11月1日開催)の参加受付が始まりました。

今年から、申し込みのやり方をまるごと変えました。 紙もFAXもメール添付のエクセルも使いません。参加チームは、自分たちだけの入力シートに選手名を打ち込んで、ボタンを1つ押すだけです。

そしてその仕組みを作ったのは、プログラミングの知識がまったくない私でした。AIに相談しながら、5月から9月までかけて組み上げました。今日はその話です。

大会の受付は、じつは「転記」の仕事だった

大会の申し込みというと、多くの方は「申込書を出して終わり」と思われるかもしれません。運営側から見ると、そこから先が本番です。私たちの大会には、毎年約20のクラブから200人ほどの選手が集まります。届いた申し込みを、運営はこう扱います。

チームごとにバラバラの形式で届いたファイルを開き、1つの表に貼り合わせる。人数を数えて参加費を計算し、入金と突き合わせる。最後に、園児・小学生低学年・高学年・中学生・高校生・大学・一般というクラスごとに、試技順(演技する順番)を抽選してグループに分ける――。

どの工程も、要は「写す」作業です。 そして写す作業には、必ずミスが混ざります。名前の漢字が違う、学年の区分がひとつずれる、人数が1人合わない。大会前の運営がいちばん神経を使うのは、実はこういうところです。

そのうえ、個人情報の問題があります。1枚の表をみんなで共有すれば早いのですが、それをやるとAクラブの人にBクラブの子の氏名も生年月日も全部見えてしまう。 便利さと引き換えに差し出すには、あまりに重いものです。

「誰かが直してくれる話」ではなかった

前に書いた記事でも触れたのですが、私はこの手の困りごとを長く放置してきました。理由ははっきりしています。

壊れているわけではないからです。 手間はかかるけれど、毎年なんとか回っている。専門の業者さんに頼めば相応の費用がかかりますし、年に1回しか使わない仕組みにその予算はありません。地域のスポーツ団体の運営費は、そんなに潤沢ではありません。

そして何より、自分で作れるという発想がありませんでした。

専門用語ゼロで、AIに相談してみた

そこで、Claude Code(AIに文章で指示を出して、パソコンの作業を手伝ってもらう道具)に相談しました。私が伝えたのは、だいたいこんな内容です。

トランポリンの大会で、参加申込を受け付けるシステムを作りたい。集まったデータは運営側で自動的に1つにまとめたい。お金はかけたくない。できればGoogleのサービスだけで作りたい。なぜなら私以外でも使えるようにしたいから。

技術の言葉は1つも使っていません。 使えないので当然です。あわせて、さきほどの心配――他のチームの個人情報が見えるのは避けたいということも伝えました。

この中でひとつだけ、技術に近い注文をつけています。「Googleのサービスだけで」という部分です。私がいなくなっても続く形にしたかったからです。特別なソフトも、私だけが知っている操作も要らない形にしておかないと、私が委員会を離れた翌年に止まってしまいます。 地域の団体で仕組みを作るなら、持続可能な形にしておくこと――これをいちばん大事に考えていました。

AIから返ってきたのは、いきなりプログラミングのコードではなく設計の相談でした。要約するとこうです。Googleスプレッドシート(無料の表計算)だけで完結させられる。チームごとに専用の入力シートを配り、それぞれに固有の「合言葉」を持たせる。チームが送信ボタンを押すと、その合言葉つきで運営のシートにデータが飛ぶ。運営のシートそのものは、チームには一切見せない。

聞いてしまえば当たり前のようですが、この形を自分で思いつくことは、私にはできませんでした。

できあがったもの

そこから約3か月半、ちょっとずつ時間を見つけながら作業をして、今こうなっています。

  • 申し込みフォームが届いたら、運営は代表者の名前とメールアドレスを転記して、ボタンを1回押すだけ。 そのチーム専用の入力シートが自動で作られ、案内メールが自動で送られる
  • チームは自チームの選手しか見えないシートに入力する。生年月日を入れると、学年の区分は自動で判定される
  • 参加費と審判依頼料は自動計算。 審判を連れてきてくれるチームは、その場で免除が反映される
  • チームが送信すると、運営の一覧表に自動で集約され、同時に「受付完了メール」がチームに自動返信される(受付内容・金額・振込先つき)
  • 大会前には、クラス分けと試技順の抽選、12人ずつのグループ分けが自動で作られる

運営が手でメールを書く場面は、もうありません。 集計にかかる時間が従来よりぐっと短くなるのは、やってみて明らかでした。しかも、かかった費用はゼロ円です(強いて言えば、Claudeのサブスク料金くらい😊)。

AIが一番役に立ったのは、作るところではなかった

意外に思われるかもしれませんが、プログラムを書いてくれたことより、ありがたかったことがあります。

ひとつは、質問を返してくれたことです。 「同意はどうやって取りますか」「締切を過ぎた送信は止めますか」「同じチームが2回送ってきたら、上書きしますか、両方残しますか」。運営として決めなければいけないのに、私が考えずに済ませていたことを、片っ端から聞かれました。AIは決めてくれません。決めるのは私です。 ただ、「決めなければいけないことは何か」を並べてくれる。専門家に相談しているのと、ほとんど同じでした。

もうひとつは、何度でもやり直せることです。

8月、私以外の人がちゃんと使えるかを確かめるため、できあがったシートを委員会のスタッフに渡して、実際に入力してもらいました。返ってきた指摘はいくつもありましたが、ひとつ挙げるとこうです。

選手の情報を入力し終えて、いよいよ運営に送信する段になったとき、画面のどこから送ればいいのかが分からない。

作った私自身は、もちろん迷いません。ですが初めて触る人には、どこを押せばいいのかの手がかりすらない。 使いやすさの面で、自分がまるごと見落としていた部分でした。

そこから、押す場所に赤枠を入れたスクリーンショット7枚の説明を作り、実際に画面が出てくる順番どおりに並べ直しました。配布シートにも「★送信のしかた」というタブを足しました。

これがもし、業者さんへの発注だったらどうだったか。「全部並べ替えて作り直してください」とは、なかなか言えません。言えたとしても、費用と日数がかかります。現場から出た声を、その日のうちに直せる。 できあがったものの出来よりも、私にはこちらのほうが大きなことでした。

必要だったのは、技術ではなかった

やってみて思うのは、必要だったのは技術の知識ではなく、「現場で何にどう困っているか」を言葉にする力だったということです。

学年の区切りはどこか。審判依頼料はどういう条件で免除になるのか。締切を過ぎた申し込みをどう扱うのが親切か。そして、この仕組みを来年、誰が動かすのか。 これはAIには分かりません。14年間この現場に立ってきた人間にしか分からないことです。逆に、それを形にする作業は、まるごと任せられました。現場を知っている人が、道具を持てるようになった――今回いちばん強く感じたのは、そこでした。

これは、指導の現場とまったく同じです。「なんとなく怖い」のままでは直せませんが、「宙返りするとき、どこを見ればいいかわからない」まで言葉にできれば、手の打ち方は見えてきます。困りごとを具体的に語れることは、それ自体がひとつの技術です。

最後に宣伝です

第13回茨城県チャレンジカップ 兼 第35回茨城県トランポリン育成競技大会は、11月1日開催。事前申込は10月4日まで受け付けています。チャレンジカップ部門はオープン参加ですので、県外のクラブの皆さまもご参加いただけます。詳しくは大会情報ページ(ibaraki-trampoline.com)をご覧ください。

また、観覧は自由です。 この記事でトランポリンに興味を持たれた方は、試合がどういうものなのか、ぜひ会場で見ていただけると嬉しいです。

次は、各チームが事前に運営へ提出する、選手の演技する技を記した競技カード(演技構成表)のオンライン提出の仕組みを作っています。今まさに開発中で、エントリー締切に合わせて公開する予定です。

おわりに

事務仕事を軽くするのは、それ自体が目的ではありません。運営の手間が減ったぶんだけ、大会までの練習の日々も、当日の演技も、私たちは子どもたちをちゃんと見ていられます。

今年は、取りまとめの手間は減りそうです。そのかわり、システムが無事に動いてくれるかどうかで、私のドキドキが増えました。

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